ここ清里町の人口は4200人ほどで(2017年現在)私の家は町の中心から4キロほどはなれた丘の上にあります。北海道でこのような少し町外れのところの冬はもちろん虫も鳴かず車もほとんど通らず雪は音を吸収して風の無い日には無音の世界が広がっています。本州でも感じたことがあると思いますが雪国の特徴は冬の静けさです。そして北海道の冬はトドマツやエゾマツなどクリスマスツリーに使うような松の仲間を除き樹々の葉がほとんど落ちて森が明るく見通しがきくようになります。そして大地は一面雪に覆われるので北海道の冬は他の季節よりさらに広大に感じる、しかし音がしない、というちょっと不思議な世界を体験できます。またウチでは北風の強い日には10キロ先の海の波の音が「ゴーッ」と聞こえるのですがそれも流氷が来ると海が大氷原となって波が無くなり無音となります。これは流氷という氷で海が蓋をされるからです。でも北風が強い場合はキューキューという流氷どうしがこすれ合う「流氷鳴き」が聞こえることもあります。
野生動物を見るのもいい季節で北海道の野鳥の8割ぐらいは冬は暖かい地方へ渡って行くのですがキツツキの仲間やシジュウカラなどの小さい鳥の仲間などの残った鳥達とオオワシやオジロワシ、カラスの仲間のワタリガラスなど北の方からやってきた鳥達が見られる楽しい季節です。大人のオオワシは白と黒のパトカーのような色の鳥で翼を広げると2メートル40㌢にもなる、鳥類の中でも最大級で立派で強そうなのにとても警戒心が強くて写真を撮るために近寄ろうとすると50メートルぐらい離れていても飛んでいってしまいます。またよくカラスに「捕まらなければお前なんか怖くないんだよ~」と言われているようにしつこく追いかけられたりしている顔も性格も愛嬌のあるワシです。またよく見るカラスはハシブトガラスとハシボソガラスという読んで字のごとくクチバシの太いものと細いものの2種類いるのですがもう一種類、冬に北国から知床周辺にやってくるワタリガラスというカラスがいます。このカラス、見た目は少し大きめの普通のカラスなのですが鳴き声がカポンカポンッ、ポコッ、カコカコという鳴き方をする面白いカラスです。このカラスはブータンの国鳥だったり北米の先住民族の中では神話に出てきたりトーテムポールに掘られていたりする「外国ではちょっと偉い」カラスでゴミ出しの日に「あっちいけ」と追い払っているカラスに対する感情とは違いこのワタリガラスと見ると私は神々しさを感じます。
また他の動物たちではヒグマやシマリスは冬は穴の中で眠ってしまうのですが灰色でちょっと大きいエゾリスはせっせと森の中を走り回っています、エゾシカは樹の皮や一生懸命雪を掘って残った草を食べキタキツネはウサギの足あとなどを追跡していたりと意外に活発に動いています。
また川の中でも1月初め頃まではサケも川に上ってきて産卵し死んでしまうのですがこのサケが凄いと感じるところは死骸が数日でみるみるうちに溶けるように腐っていき春までにはほとんど骨も残らないということで死んでからも「早く海や大地の栄養になって次の形になろう」という意志があるかのようです。
また冬の寒い日の自然現象では水蒸気が凍ってキラキラ光るダイヤモンドダストや日の光が柱のように上下に伸びるサンピラー、水面に白い花が咲いたように水蒸気が凍るフロストフラワー、川の水しぶきが手のひらのような面白い形に凍るしぶき氷などとても綺麗で素晴らしい現象も見ることができます。またちょっとした遊びで面白いのは温泉帰りの濡れタオル回し。だいたい氷点下10℃以下ぐらいになるとぐるぐると回した濡れタオルが板のように凍っていき、シャキッと立ちます。またシャボン玉も作ってみてください。ふわふわと飛んでいって壁などにくっついても割れません。触るとやわらかくてフニョっていうかんじで凹みます。さらに氷点下20℃以下になるぐらい冷え込むとホントに凍ったバナナで釘が打てます。ただどんなに寒くてもオシッコがそのまま放物線を描いて凍るというまではいきません・・・
来られるときの一番の注意点は雪が解けてまた凍ったあるいは車や人の足で踏み固められツルツルとなった氷での転倒。対策として今はスタッドレスタイヤのような滑りづらい靴も売っています。それで小股でゆっくり歩くことです。金属のスパイクのついたゴムを靴に付けるすべり止めもありますが店などの屋内では床が傷つくので室内に入る場合は外すマナーが必要でちょっと面倒です。
冬の北海道はちょっと・・と思っていた方も流氷をはじめ素晴らしい光景が広がっていますので是非冬も意外に寒くないオホーツクを体験しに来てしてください。