ボクは結婚する前から「将来は北海道へ行って宿をやるよ」と言ってはいたけれど、まさか本当に、それも結婚5年目にして実行するとは思ってもいなかったようだ。移住へのきっかけは、大雪山の麓の町でアウトドアガイドの会社を立ち上げるので来ないか、という渡りに船の話が来たことだ。それに対しボクは一人で即決。その場で決めてしまった。このことに対し妻は本気で怒っていた。たぶん反対はしなかっただろうが心の準備や子供のこと等もあり、「一人で勝手に決めるなっ!」と」思ったようだ。(当然だ)会社員での新潟勤務時代、新婚旅行で北海道へキャンプ&安宿旅行には行ったが、おいそれと実家に帰れない北の僻地への移住、経済的な問題、生後半年の乳児を抱えた妻の不安はかなりのものであった。ボクも北海道初仕事が休み無し、給料無し、命の保障無しのナイナイづくしだったのでそのことも妻の不安を増幅させた。それに・・・捜してもらった借家の家賃月7000円はよかったのだが家は北向きカビだらけ、フロは沸かし湯シャワー無し、クモ、ワラジムシ、ハサミムシ他、地味で不気味な虫多数出没、おまけにトイレはもろポットンの汲み取り式、と、今までの新築アパート快適暮らしから一変したのだ。特に乾燥しているはずの北海道なのに家の中の湿気にはまいった。田舎暮らしの欠点を集結したようなこの家は乳児を連れて家にいることが多い妻にはつらすぎた。ボクも留守がちだったのでつらさ倍増。今考えるとよい経験だったが連れてこられるほうにとってはたまらなかっただろう。
これから妻子持ちで田舎へ移住してくる方、回りの自然環境は良くなるにしても住環境のレベルダウンは極端すぎないほうがいいですよ。
交通機関が車しかないうちの周りは運転は必須だ。斜里や清里の街中に住んでいるお年寄りでは免許がない方もいるがこちらではペーパードライバーという人は存在しない。理想は車なんか持たず、乗らずで暮らしていければ良いのだろうけど今のここの社会構造じゃ無理かな。
で、よく聞かれるのが冬の雪道。幸いオホーツク海側のこの地域は積雪が多くないので毎日雪道ということはないけれど1~2週間に一度は悪条件で運転しなければならない。実際は「えっ、そんなに楽なの?」と思うくらい路面は乾いているときが多くて夏道と同じように運転できるのだ。こちらは除雪は一つの産業になっていて、道、市町村がそれぞれ除雪車を持っている上、土建屋さんなんかもショベルカーで出動するから雪が積もってもたちまち除雪されて普通の生活ができるようになる。一番多いのがダンプにハイド板(ブルトーザーについている土を押すやつ)のついている車なのだがこれが50~60キロで雪を跳ね飛ばして進んでいると迫力満点、雪煙に包まれた小さな彗星のようだ。というわけでお世辞にも上手いとはいえない妻の運転でも問題なく生活できるのです。
しかし・・・その悪条件のなかでも最悪なときが除雪後に少しの間残ったり、山間部などの日陰に残る圧雪アイスバーン。それにたまに低気圧がきて暖かく湿った雪になると次の日はカチカチつるつるになる。それに長い距離をハイスピードで走るという地域性のためタイヤチェーンという文化が無いので路面はスタッドレスタイヤで磨かれて氷光している。それに意外に事故が多いのが4WD車だ。走破力は抜群のためついスピードを出してしまう上、4つのタイヤがいつも回っているのでいったん横滑りするとくるっとまわってしまう。特に斜めに傾いている道路は直線でも要注意。ボクも何度もフィギアスケートのように回っている。あと条件の悪い日は大雪と地吹雪のとき。雪が砂のように働くのか意外に滑らないけど前がよく見えないので、ぶつかる、ひっくり返る、突っ込む・・などあちこちで畑や側溝に車が落ちる。こんな日は天候が回復するまで外に出ないのが一番だ。たとえ仕事があったとしても天候には勝てません。またこちらでは「雪で車が動かないよー」という理由が会社でも許されるのです。天変地異で首都圏の交通機関がマヒしているとき、駅員などに文句をいう人がいるが、そういう人は今まで「どうにもならないこと」を経験していないんじゃないかな・・?
北海道の真冬の運転というと、さも大変そう、とおもわれるかもしれないけど皆は普通に運転、生活している。で、いつもちょっぴり多めに食料をためておいて、天候に勝てない日は家で本でも読んでいるのがいいすごし方です。